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令和5年度風土記講座 講座情報

記事ID:0039825 更新日:2023年11月10日更新 印刷ページ表示 大きな文字で印刷ページ表示 <外部リンク>

大鷹の眼で見た『播磨国風土記』ー十年の講座のくぎりとしてー

播磨国風土記チラシ表 播磨国風土記講座チラシ裏

 

令和5年度は11月から3か月連続で開催します。

開催情報

第1回:11月9日
第2回:12月14日
第3回:1月11日
時間:いずれも毎月第二木曜日、午後1時30分から午後3時30分(受付は午後1時から)
場所:加西市民会館文化ホール
定員:399人(小ホールは150人)
参加費:各回500円(申し込み不要)

講座内容

主題 大鷹の眼で見た『播磨国風土記』ー十年の講座のくぎりとしてー

 十年にわたる「播磨国風土記講座」を担当させていただき、ここに終わるにあたり、今思うこと。それは『播磨国風土記』研究には先人たちの長く厚い業績があること、そしてそれを読んでも、「播磨国の古代」はほんとうには見通せない思いが残ったという正直な感想です。学んで思わざればすなわち暗し―というのは孔子のことばだったと記憶しますが、わたしはもちろん、先人の皆さんも「学ぶ」ことに偏ってこられた研究史であったと考えざるをえません。『播磨国風土記』の記述をひとつひとつ古事記・日本書紀の記述と突き合わせて互いの矛盾あるいは「どちらかの一方的な欠如」について考えたり、あるいは「目の前にひろがっている風土という事実との落差」について深く思いをめぐらすという研究には出合いませんでした。「すなわち暗し」となるのも当然なのです。
 たとえば、播磨路ことに東播のそれを歩けば次々に現れる「大歳神社」も大歳神も『播磨国風土記』にいっさい現れないのはなぜなのか? そのことについて、どの研究書が語ってくれているでしょう。本居宣長は『古事記伝』において「大年神」を「穀神」であると断定しています。「とし」という日本語の語彙に「穀物の収穫」という字義が生まれるのは、8世紀の半ば以降であることが確定しています。紀元前1世紀の存在である「大年神」の名に「穀物神」の字義が託されている可能性はありません。また、古代においては穀物神はすべて女性神で、しかも子神を持ちません。稲荷神、伊勢の外宮神も、後世に男性神として待遇されるようになりますが、例外ではありません。「大年神」にはたくさんの御子神があり、大年神の御子神は大和大権の守護神として、現在まで宮中に祀られています。古事記の「大年神」は「大歳神」の意図的な誤記載で、「大歳神」は東アジアの共通理解では、木星神であり、太陽神さえ統率する上位の神なのです。本居宣長もそのことに気づいているはずですが、それでは天照大神を最高神とする体系に障るため、意図的にとぼけて誤誘導しているのです。大和国唯一の「式内社・大歳神社」は近鉄の橿原神宮前駅のすぐ東にあり、畝日御陵の原型は「大歳神陵」ではなかったと思うほどです。

 加古川の両岸にひろがる鴨国は安曇族と久米族の創始に発祥します。安曇族は海神を祀って経世済民を担当し、久米族は山神を祀って、祭祀と軍事を担当します。『播磨国風土記』賀毛郡の条に「玉野の村あり。由は意奚・袁奚二の皇子等、美嚢の郡志深の里の高宮に坐して、山部小楯を遣はして、国造許麻の女・根日女命を誂ひたまひき」と見える記事で、「山部小楯」が久米族の嫡孫であり、「国造許麻」が安曇族の嫡孫なのです。許麻は高麗であり、高句麗を意味します。安曇族は紀元前2世紀ころまで、天津とその東北の中国遼寧省にあたる地域に中国の拠点を置いており、宝貝、真珠、玉製品の交易を行っていました。後に高句麗国となる集団の勃興期でもあります。両者は深く交流していました。弥生の銅剣が「遼寧型」と呼ばれること、高句麗古語に「ひ・ふ・み・よ」で始まる数詞が残っているのはそのためです。許麻は高麗(こま)です。一族は玉類の製造と交易に秀でていました。「玉を以て墓を飾れ」という両皇子の言葉はそこから生まれています。

第一回 「播磨びと」たちの原郷はどこか?オオナムチとスクナヒコ

 のちに「播磨国」とよばれる地域は、紀元前7世紀前後に筑紫地方方面からやってきた集団が、加古川の中流域に拠点を設けたことから始まります。一帯は「大和のまえの大和」であり、その中心であった加西地域は「飛鳥のまえの飛鳥」であると言っていいでしょう。集団の原郷は筑紫のどのあたりだったのか。その問いに答える鍵は「酒見」という地名に残っています。​

第二回 「王権創生」は書き込まれているか?スサノオと大歳神

 スサノオは歴史上に実在し、その実年代は紀元前2世紀後半から紀元前1世紀の冒頭あたりです。その誕生には安曇族と中国の徐福が関係していると考えられます。アマテラスはスサノオの16代のちの子孫で、紀元2世紀冒頭あたりにモデルとなった人物はいますが、飛鳥時代末に新しく造られた太陽神です。大歳神はスサノオの子で、大和王権の初代となりました。書けない真実を、どのように書くか。その工夫を探ります。

第三回 再生する「神々と王権」応神天皇と住吉神

 安曇族と久米族の勢力は、10代崇神天皇の時代に大幅に減衰しています。朝鮮半島に残した勢力の撤退が4世紀にあり、大和王権にも組み替えが迫られました。もともと朝鮮半島に強かった安曇族と久米族は、この期に巻き返しを図ります。応神天皇と住吉神の登場です。「播磨国」が再び強大になってゆく過程をあとづけましょう。

 

 

講師情報

光田和伸氏顔写真

光田和伸氏
国文学者。愛媛県松山市生まれ。元国際日本文化センター准教授。専門は比較文化・比較文学。主に和歌、連歌、俳諧を研究。著書に『恋の隠し方-兼好と「徒然草」-』、『芭蕉めざめる』(ともに青草書房)。

 

 

 

その他、注意事項

  • 事前申し込み、予約などはありません。
  • 座席は自由席になります。
  • テキストは事務局で用意します。

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