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令和4年6月10日
日々是好日27でもお伝えしたように、加西市は令和4年4月1日から小学校、中学校の給食費を無料にしました。たとえば小、中学生の子が2人いる家庭では、毎月1万円近くが無料になったということです。ただし、素直に「よかったなあ」と受け止めてもらえるだろうと思った施策でも、新しいこと、変化することには、必ず様々な反対意見が出ます。例えば「親がお金を出さなくてよくなると監視の目が弱くなって、給食の質が落ちるのではないか?」「安かろう悪かろうにならないだろうね?」
「・・・あのね、1億4000万円も市の予算を投入して給食の質を下げるくらいなら、最初から無償化なんかしませんよ! 」
私は心の中でつぶやきます。
そんなこんなもあり、せっかく給食の無償化を実現させたのだから、子どもたちに「無償化記念特別メニュー」を食べてもらおう! という企画が持ち上がりました。担当者は大わらわです。
できるだけ加西産の食材を用意して、地産地消メニューを実現しよう。
加西市産の牛肉とか使えないかなあ——。
やってみましょう!
と言ったものの、交渉を始めた最初は1キロ1万円と言われ、担当者はくじけかけました。とてもそんな予算は無理。
「そこを何とか、いえ、切り落としでも結構ですから」
電話でのやり取りが、教育長室にももれ聞こえてきます。
「苦戦しているんだなあ、子どもたちのために、頑張れ! 」とひそかにエールを送っていました。
そして4月19日、給食無償化記念メニューが実現しました。目玉は、当初1キロ1万円と言われた「加西産ビーフ」のカレーです。考え、交渉し、栄養教諭たちとも何度も話し合って、スペシャルな「給食無償化記念メニュー」が実現したのです。
牛肉はもちろん、ニンニクも玉ねぎもトマトも加西産。サイドメニューは、加西産の野菜(春キャベツやアスパラガス、きくらげなど)の「加西の春サラダ」です。
「おいしいなあ!」
「ありがとうございます!」
子どもたちの旺盛な食欲と笑顔に、担当者は内心とてもうれしかったと思います。
翌日、教育委員会の廊下で会ったので声をかけたら「子どもは腹が減っていれば、白い飯と沢庵で十分なんですよ」とおっしゃった校長先生もいらっしゃいましたが、そしてもちろんそれは、美食ばかりがいいわけではない、という比喩なのだと理解していますが、給食は、成長期の子どもたちの心と体を育む大切な教育の柱の一本だと思います。
なんと言われても、私たちはできる限り美味しく、栄養価を考えた、地産地消の給食に挑戦し続けます。
「来季のニンジンの使用量を割り出して、あらかじめ植え付けしてもらいましょう」
「JAさんが地元のアスパラガスを100キロ手配してくれるそうだよ」
「この方、99%有機で甘長トウガラシを栽培していらっしゃるんです。ぜひ給食に使わせていただきましょう」
コストと戦いながら、農業王国・加西に生まれ育った子どもたちに、何とか地元の旬の野菜を届けたいと努力している担当者たち。毎日のように教育総務課からもれ聞こえてくる声が、私を幸せな気持ちにしてくれます。