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教育長雑感 「日々是好日」〈31〉

記事ID:0026661 更新日:2022年5月12日更新 印刷ページ表示 大きな文字で印刷ページ表示 <外部リンク>

ジェネラリストとスペシャリスト

民家の側 中央に満開の桜の大木の写真

令和4年5月12日

春の人事異動については、いつも複雑な気持ちを味わいます。民間では、いまやジェネラリストよりスペシャリストをどう確保するかが大きな課題です。ところが公務員の社会では、どんな仕事でもこなせるジェネラリストが重宝されるようです。しかしこの激変する世界に立ち向かい、Society5.0に揺れる社会の要求に応えるには、むしろ各人が有している得意分野を伸ばしてスペシャリストを育てようとする、新しい公務員像が求められていると思います。

私がとても驚いたのは、市職員のほとんどが、たとえ自分の希望とは大きく異なっていても、「内示が出たら仕方がない」と、不本意な人事異動を黙々と受け入れていることでした。「今やっていることがもう少しで花開く。どうしてもあと1~2年は留任させて欲しい、とあれほど頼んでおいたのに」と嘆く声を何人もから聞きました。ところが一晩過ぎればみんな自分を納得させ、ある種あきらめて次のポジションに移っていきます。

もちろんこれは公務員のみならず、日本の企業でも長い間、「会社側が一方的に人事異動を実施する」ことが当然とされてきました。じつはこれって日本独特で、世界では「世にも珍しい強制人事異動」と呼ばれているのをご存じですか?

たとえばアメリカでは、雇用契約を結ぶときには自分の職務はあらかじめ定められており、ポストを変更したり異動させるときは「社内公募」することが多い。オランダなどでは、働く側と徹底的な合意形成がないと異動はさせられません。ドイツもほぼ同じ。彼らは、もし自分の意思に反してある日突然、全く畑違いの仕事を命じられたら、「ノー!」と叫んで徹底的に闘うでしょう。

「それぞれの言い分を聞いていたら組織が回らない」、「人気のある仕事にばかり希望者が偏ってしまう」「人事こそ力だ」などなど、よく聞く話ですが、オープンな気持ちで世界を見回せば、個人の希望を尊重しているアメリカやドイツで、そのために組織が崩壊したと聞いたことはないです。ただ、欧米の雇用形態も、悪くすると一生同じ部署で同じ仕事を続けるので、専門性は高くなるが、仕事に対するモチベーションが下がってしまう、とも言われます。

あえて公務員に限って言いますが、私はいま、新しい公務員像が求められていると思います。そもそも地方行政組織は、地域の課題を解決するために置かれています。2~3年に一度の頻度で広範に人を入れ替えると、確かにマンネリ化を防ぎ、あらゆる部署で通用するジェネラリストは育つかもしれません。しかし、従来どおりのオールマイティで「地域の課題」を調整し、解決できた時代は過去のものです。むしろ複雑になった地域の課題や利害を調整し解決するためには、プロフェッショナルな知識と体験から生まれる説得力が必要とされています。

一人ひとりが適性に合う部署で、「これだ」と思える業務に就いたら、もちろん本人の希望を聞いたうえで、一定期間異動を見合わせ、専門性を身につけさせたうえで異動させる。各部署にプロフェッショナリズムを醸成すれば、「お役所仕事」への批判は減少し、市民からの信頼度は格段に増すだろうと思います。

何よりも、仕事を愛し、仕事に誇りをもって前向きに立ち向かうスペシャリストたちの存在は、市役所を明るく快適な場所にしてくれるだろうと思います。

加西市教育長 民輪 めぐみ

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