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令和4年2月8日
1月30日の日曜日の午後、アスティア加西3階の地域交流センターで、ちょっと面白い「お魚との出会い」がありました。教育委員会の教育総務課が「One Day Fish」と題して、食育と環境学習のイベントを開いたのです。
床いっぱいに敷かれた青いビニールシート。各テーブルの上には小さなタイやサバ、でっかいホラ貝、ヒラメ、タコ、エビ……。まるで理科の実験室のようでもあり、家庭科の調理室のようでもある不思議な光景の中で、子どもたちが楽しそうに動き回っています。ある子はぬるぬるした魚の肌が気持ち悪そうで、腰が引けています。ある子は瞳をキラキラさせながら魚の口を開けて「わあ、歯がある!」、「この背びれ、前から撫でたらスムースやのに、後ろから触ったらとげとげで怪我しそうやわ!」。お魚はスーパーマーケットで買うトレーに入った切り身しか知らない子もいて、成魚など触ったこともない子が大半です。
この日の講師は、水産庁長官から任命された「お魚かたりべ」の早武忠利さんと、生き物コンサルタントの青木宏樹さん。二人とも東京から加西市まで駆けつけてくれた「お魚のプロ」です。公募に申し込んで参加してくれたのは、小学生の親子20組40人で、5年生も6年生もいましたが、ほとんどが1年生から4年生の子どもたちでした。
これを企画したのは教育総務課のニューフェイス。実家は東北にあるのに、東京の前勤務先を退職してたった一人でIターンしてきた女性です。「大丈夫かな、加西市に居ついてくれるかな」などという私の心配など全く知らぬげに、いつの間にか市内の各小学校を回って、先生方がまだ不得意なプログラミングの出前授業もしてくれています。「加西市に来てよかった。楽しいです」という彼女の笑顔を見ると、私もホッとします。なぜ、突然「One Day Fish」なの? と聞くと「子どもは水族館やお魚が大好きなのに、加西市には海がないからです」という答え。全く新しいタイプの地方公務員の誕生ですかね(笑)
話を当日のイベントに戻すと、まず第一部は早武さんの座学。お話の内容は、ご自分が東南アジアでエビの買い付けをしていた経験を交えて、エビの種類は3000もあること、深海では赤が保護色になるため、深海に生きるエビは赤い。グレーっぽいエビは浅い海で生きているなどと、エビから始まって、ヒラメはイカやお魚をバリバリ食べるハンターなので、口が大きく両あごに鋭い歯を持っている。でも似ているカレイは口が小さい、とか、興味津々のお魚の博物学を披露。「みんな、タイやサバ、イカやエビなど、良く知っているお魚しか食べないでしょ。そうするとお店もそういうお魚しか売らなくなる。悪循環になってしまうので、生き物の多様性を守るためにも、名前を知らないお魚も食べてみようね」とか、「お魚を上手に食べて残さないようにしよう」とSDGsの視点を込めた話など、さすが「お魚かたりべ」、子どもたちの興味関心を上手に引き出します。
第2部は前述の青いシートがひかれた部屋で、何グループかに分かれての体験授業です。
「お魚の呼吸はどうやってするのかな」「人間やったら鼻からやけどなあ?」
「これがお魚の内臓です」「うわあ!」「なんか黒いもんがある!」
「ちょっと頭を割ってみようかな」「ひえー!」
「エビの足は何本あるか見てみよう」
「先がおしゃもじのようになっているのが泳ぐための足。10本あります。このつまようじのような足は歩くための足。これも10本。胸から口のほうに伸びているのは、食べるための足で、6本あります」「さて、エビの足は何本?」
「26本 ‼」
たぶん教育委員会の教育総務課が主催して、子どもたちの食育イベントを開催するなんて、今までになかったことだと思います。会場には学校教育課はもちろん首長部局のサポーターの顔も見えます。横の連携が生まれてこそ実現できた「One Day Fish」の試み。保護者の方々だけでなく、日曜日の開催にかかわらず、主催者側のみんなが楽しそうだったのが、なにより、私の気持ちをウキウキさせてくれました。