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令和3年12月23日
12月の半ば、富合小学校の5、6年生が、加西市朝妻町の伊東電機イノベーションセンターを訪問。STEAM教育の実践だというので、同行させてもらいました。伊東電機は、コンベヤ駆動用のモータローラ(パワーモーラ)の開発、製造、販売を行っている地元の企業ですが、昭和21年に創業して75年。今や日本、アメリカ、ヨーロッパ、アジアに10か所以上の拠点を持ち、年商149億、世界シェア50%(同社HP)というグローバル企業です。
本社の隣にあるイノベーションセンターの中は、自由な発想と最新テクノロジーの宝庫でした。目の前に置かれたパワーモーラは、本の配送や自動車部品の組み立てライン、食器洗浄機のコンベヤ等々に使われており、コンピュータにつながって、その情報をキャッチして止まったり、曲がったり。モノを運ぶコロの原理で重いものを運ぶ、そのモータが「パワーモーラ」です。運ぶモノの重さがわかり、前のモノにはぶつからず、きちんと仕分けができる「かしこいモータ」なのです。
設置してあるコンベヤを子どもたちが囲むと、大きなスクリーンに、加西市からは650km以上離れている栃木県テックセンターの技術者の顔が映りました。「では、僕がコントロールして、皆さんの前のコンベヤを動かしますね」と声が聞こえた途端、コンベヤはスーッと動き、黄、赤、緑と色分けされた荷物の仕分けを始めました。「ワアーッ!」と歓声。子どもたちが手を挙げて質問すると、社長自ら分かりやすく説明。子どもたちは興味津々、食入るように聞いています。
いくつものグループに分かれてセンター内を案内され、次に向かったのは植物工場研究センターでした。なんと、伊東電機では植物を育てる機械の開発をし、美味しくて安全な野菜が育てられるような研究もしているのです。
私はずいぶん前から、「21世紀はagriculture(アグリカルチャー=農業)の時代だ」と言い続けていますが、イノベーションセンターの無菌室ですくすく育っているレタスを前にして、いっそうその観を強くしました。レタスは種をまいて1日目には根を出し、3日目には芽を出し、11日目と21日目に広い場所に植え替え、44日目に収穫します。その時レタスは80gに成長しているそうです。
後日、校長先生が、子どもたちの率直な感想を届けてくださいました。
パワーモーラを見て感動したのは「やりたい仕分けが自動でできるということ」「インターネットで遠隔操作ができること」「子どもでもプログラミングができること」「必要なところだけが動いて電気代が安くすむこと」「曲がるときの仕組みがすごい」などと、けっこうきちんと本質に迫っています。
植物工場で驚いたのは「(コンベヤのモータを作っている会社が)いちごやレタスを作っていること」「日光がLED、土が肥料入りの水であること」「新しいことをしようとしていること」「いちごの水やりなど、人がしていたことを全自動で機械がしていたこと」「その水やりも、パワーモーラを使って確実に水がかかるように開発されていたこと」「おいしそうだったこと」等々。
私がうれしかったのは、「伊東電機でアルバイトで働かせてもらいたい」という一人の子の感想です。これって、地元に、自分が働きたくなるほど興味深い企業があるということですよね。
私が車いすで参加していたことに気遣ってくれたからでしょうか。「この技術をどう活用しますか?」という問いかけに、「家での生活を楽にしたい」「車椅子の人が簡単に進めるように、廊下にパワーモーラを設置する」「地面に敷いたら、足の不自由な人や目の見えない人などが、自由に行きたいところに行ける」などという答えがありました。STEAM教育の眼目の一つは、「こんなのあったらいいな!」と、学びを現実の社会に生かそうとする力の育成です。
廊下にパワーモーラを設置したら転んじゃうんじゃないかなあ、と苦笑しながらも、子どもたちの優しい発想に、私はちょっとウルウルしました。