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教育長雑感 「日々是好日」〈23〉

記事ID:0022760 更新日:2021年12月16日更新 印刷ページ表示 大きな文字で印刷ページ表示 <外部リンク>

「ルールがない」というルール

ピンクのバラの写真

令和3年12月16日

ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平さんが、満票でアメリカン・リーグMVP=最優秀選手に選ばれましたね。大谷選手は二刀流で大活躍し、大リーグは4年目。ピッチャーとして9勝、156奪三振、バッターとしてはホームラン46本、100打点、26盗塁で、「投打ともに自己最高の成績をマークした」、と報道されていました。MVPを受賞した日本人は、大リーグでイチローさん以来20年ぶり、2人目だそうですね。
日々新しくセンセーショナルなニュースが次々と報道されるので、ひと月前の出来事さえ遠い記憶のように錯覚しますが、大谷選手の受賞は2021年のベスト3に入れてもいいスペシャルなニュースではないかと思います。
大谷選手を受賞に導いた要因はたくさんあると思いますが、私はいくつもの記事を読みながら、この人がいなかったら、今回の受賞はなかったな、と注目した人がいます。「大リーグきっての知将」と言われているマドン監督です。
マドン監督は最優秀監督賞を3回も受賞している名監督だそうですが、大学では野球とアメリカンフットボールに打ち込み、1976年に卒業したのち、カリフォルニア・エンゼルスのマイナーで捕手としてプレーをし、メジャー昇格をしないまま3年後に現役を引退。スカウトや打撃インストラクターなどとして野球と関わってきた苦労人です。

2月のキャンプ初日に、大谷選手の「フル稼働戦略」を発表。「これまで登板前後に休養日を入れていた翔平ルールを、ことしは作らない」と宣言しました。掌中の珠ともいうべき「翔平」が受賞した後、監督はインタビューで理由を問われ、「私はルールが好きじゃない。権力を持つ人間が、制限を設けて若者の偉業を妨げることが多い。ルールではなく、誠実さが大切だと思う」「翔平はうそを言わず、誠実で謙虚。自分の発言には責任を持つ」と語っています。
監督は、通訳を介して毎晩メールで大谷選手と話していたそうですが、「翔平」は一度も「明日はだめです」と言ったことがなく、いつも「準備万端です、OK です」と答えたそうです。そして実際、球場に来ると元気いっぱいだったのです。

マドン監督は続けます。
「翔平は今年『ルールがない』というルールを作った。これは私が作ったのではなく、彼自身が作ったものだ。そして翔平は、二刀流を疑っていた人たちが間違っていたことを証明して見せた」

この記事を読んで、マドン監督が「好きじゃない」と言っている「ルール」って何なのかなあ、と考えました。
監督が、社会のルールを破って他人に迷惑をかけまくっていたわけではないでしょう。人間として大切にしなくてなならないモラルを無視したわけでもないでしょう。
監督が言っている「ルール」。それは、もしかしたら「セオリー(theory)」とか「テンプレート(template)」と言い換えられるのかもしれません。「セオリー」は「定石」とか「確立された方法」という意味です。何事につけても、経験と理論に裏打ちされた「セオリー通り」にすれば、リスクは格段に減ります。「テンプレート」は「定型」とか「ひな形」と訳せます。「テンプレ」すれば時短もでき、ポカミスも防げますよね。
しかし大谷選手は、高校生時代から「テンプレ」とは真逆の生き方をしてきました。「誰も成し遂げていないから挑戦する意味がある」と公言。時速「160キロ」と書いた目標をトレーニングルームの壁に貼り、卒業時には周囲の反対を押し切って「メジャー挑戦」を表明しました。
様々な事情があり、ドラフトで1位指名した日本ハムに入団を決めましたが、それは当時の栗山監督に「二刀流」を提案されたことが大きかったと言われています。栗山監督は18歳の大谷クンに「(二刀流という)誰も歩いたことのない道を歩いて欲しい」と言ったのです。ロサンゼルス・エンゼルスでは、マドン監督の元、登板の日には指名打者を解除されて、投手として打席に立った大谷翔平さん。日米2人の監督との出会いが、MVP受賞を後押しした要因の一つだということを疑う人はいないでしょう。
右ひじ、左ひざ、右腕と次々にケガに苦しみながら、それでも挑戦する心を失わず、パイオニアを目指し続け、いつも楽しそうにプレイするトップアスリートに、心からの敬意と祝杯を送りたいです。

加西市教育長 民輪 めぐみ

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