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令和3年10月14日
令和3年度後期、教育委員による学校計画訪問が始まりました。訪問するほうは、朝、市役所で待ち合わせて、予定表通りに各校を回ればいいのですが、訪問されるほうとしては資料の準備やら、校内の整理整頓やら、何かと面倒なことだと思います。現場の先生方の負担にならないよう、なるべく自然体の学校訪問になればと願っています。けれども、正直なところ私にとっては、各校の各先生方の教育現場をリアルに参観させていただき、生徒の素顔に触れることができるこの行事は、とても待ち遠しいものです。
今回はまだ数校を訪問しただけですが、それでも前期よりクロームブックを使っての授業が圧倒的に多くなっていると思いました。一方、定規や鉛筆を持って重さを比べるような、子どもたちの集中力と五感に訴える授業もあります。
実際の稲田のあぜ道に白板を持ち出して、地元の講師を招いて「お米」について学んでいるクラスもありました。田んぼのあぜ道でする授業なんて、例えば東京の小学校などではほとんど不可能な、播磨平野ならではの学習です。大切にしてほしいと思います。
子どもたちを包み込むように広がる刈り入れ間近な黄金色の稲田。その一粒のお米から、子どもたちが夢を広げながら、「なぜ?」「どうして?」を見つけてほしい。もし20年後、30年後に自分たちが農業をするとしたら、その時の農業はどうなっているんだろう? もっとこうなったらいいのに、こんなのがあったらいいのに、これは大事だから変えてはだめだ、と考える。そして、それを実現するにはどうしたらいいんだろう、とまた考える。そこまでくれば、これこそが加西市教育委員会を挙げて取り組もうとしている「STEAM教育」にほかなりません。一人一台のタブレットも使って、たとえば農業に関する最新テクノロジーの進み具合を調べてみる。それを活用して、自分なりに「あったらいいな」を実現するために、一人ひとりが思い思いの予想図をデザインし、それを持ち寄って検討し、プログラミングして、バーチャルの世界で動かしてみる。
心臓の手術を、心臓外科医がパソコンの画面を見て行うのと同じように、20年後には、重労働はAIに任せて、私たちはパソコンの画面を見ながらお米を育てているかもしれない。「だったら農業をしてもいいな」「最新のテクノロジーはいま何を実現可能にしているのだろうか?」 と調べたり考えたりして、 腰が痛いおじいちゃんのためにも、時間のないお父さんのためにも、農薬が怖いと言っているお母さんのためにも「こんなのがあったらいいな」「こんなの作れないかな」という素朴で具体的な疑問を形にしてみたい。一人ひとりの発想を大事にして、問いかけほめてあげれば、もしかしたら先生より子どもたちのほうがスイスイ自由に未来を描くのではないか。
2007年にiPhone、2008年にAndroidが発売されて、まだ13年しかたっていません。この10年でそれはどんどんバージョンアップされ、2016年には日本の20代のスマホ普及率は96.8%に達しました。これからの10年は、過去の10年の倍速で変化すると言われています。私は考えるところもあり、電話はまだガラパゴスですが、iPadはどこに行くにも手放しません。私たちはすでにSociety5.0(AIやロボットと共存しながら、最新技術を使って現在の問題を解決して、より快適に暮らす未来社会)の入り口に立っています。
この大変革のとき、教育の、教師のあり様が問われています。