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教育長雑感 「日々是好日」〈12〉

記事ID:0020613 更新日:2021年9月16日更新 印刷ページ表示 大きな文字で印刷ページ表示 <外部リンク>

えっ、レタスは夜に収穫するの!?

こども園の給食の写真

令和3年9月16日

先日、ある方のご紹介で三人の若い男性が教育長室におみえになりました。3人とも、数年前に加西市に移住されて農業を始めた方々でした。私は就任当初から、加西市の教育の重要な柱に「食農教育」をかかげ、「半径10キロメールの食材で給食を」と、提案しています。3人の若者は、私が加西市の学校給食と農業を連携させたいと努力していることを知って、仕事の合間を縫って訪問してくださったのです。

その一人Oさんは、子どものころから自宅の庭で野菜をつくるほど農業が好きで、「親子3世代が食べられる野菜作り」をキャッチフレーズに、レタスを中心に季節の野菜を栽培していらっしゃいます。
Kさんは、「元気でおいしい野菜から見える豊かな景色まで食卓に届けたい」と、トマトや茄子、ほうれん草を中心に育てています。
またFさんは、日本の食糧自給率の低さに驚いて、「輸入に頼っている日本はこのままだといつか食糧難になる」と危機感を覚え、使命を感じて有機野菜を作る決心をしたそうです。

彼らの話の中で驚いたのは、たとえば「レタス収穫のタイミング」を季節によって変えている、というOさんの話です。「夏場は夜に行っています。朝に収穫すると、葉に露がついたままパッケージすることになるので、腐りやすくなってしまうんです」。夜なら、その水分がレタスの中に戻ってくるので、みずみずしく長持ちしやすい、と言います。こういうことをご存じの方も多いのかもしれませんが、私はいたく感動しました。どんなことにも、「これでいい」ということはない。野菜の収穫と聞けば、“朝採れ野菜”の言葉があるように、朝の時間帯なのだと思い込んでいた「自分の常識」を恥じました。

「食育」は、キーワードとしては決して最新の言葉ではありません。食べることは生きる基本です。だからこそ、食育は知育・徳育・体育の基礎となるものだとして、平成17年の第162回国会で「食育基本法」が成立しました。この5年前には、小中学校の児童生徒の約20%、5人に1人が1週間のうち朝食を食べないことがある、という数字が発表され、ショックを受けた文科省は、法律の国会通過前に、栄養教諭制度を開始しました。私たちの心も身体も、健全な食事をしてこそ健全に作られるのだから、国民運動として食育を強力に推進しようということになったのです。平成18年には、食育推進基本計画が制定されました。

私は10年近く『料理王国』という月刊誌の編集長を兼務していたので、食育には強い関心を持っていました。教育長になって、加西市の学校給食にはことさら興味があったので、すぐにも給食をいただいてみました。現場の皆さんは予算の制限や時間の制約の中で、懸命に努力してくださっているのですが、正直、加西市の給食はまだまだよくできる余地がある、と思いました。

日本には古くから「身土不二(しんどふじ)」、「四里四方(よりよほう)」といった言葉があります。地球上に住んでいるおよそ4000種類の哺乳動物は、ほとんどが発生した場所に先祖代々住み続け、その土地で先祖代々食べてきたものを食べ続けて暮らしています。たとえば世界的に絶滅が心配されているトラは、アジア大陸に分布するネコ科最大の動物で、熱帯雨林やマングローブ、北方林(タイガ)などに生息して、単独で狩りをします。一晩に10~20kmを歩いてイノシシやシカなど、その地域に生息するあらゆる動物を捕食します。動物にとって、自分が住んでいる土地と食べ物は切り離して考えることはできないのです。このことを「身土不二」といいます。自分の身体と生まれた土地は切り離すことができない。人の命と健康は、その土地とともにあるのです。

「四里四方」は、自分が暮らすところから東西南北に四里(約16km)のものを食べるのが良いという言葉で、新鮮な旬のものが体に良いことは誰でも知っていることですし、旬のものにはビタミン・ミネラルなどの栄養素も多いのです。里芋を栽培しているFさんは、播磨の在来品種の優良系統を選抜して育成した品種「絹里芋」が自慢です。粘りが強く濃厚なうまみがあるのは、水や環境、土にこだわっているからで、なにより土が決め手だと、有機質肥料と完熟たい肥で土作りをしています。

聞くだに旨そうな加西市の野菜で、子どもたちを育てたい。食育はそこから始まると思っています。

加西市教育長 民輪 めぐみ

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