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令和3年7月14日
学校計画訪問のお話をもう一つ。
主治医からの許可が出ず、車椅子での移動が続いているため、申し訳ないことながら学校の2階、3階の昇降には、4人の男性に車椅子のまま四方を持って運びあげてもらっています。平屋でない限り、子どもたちが勉強する教室は階上にあるのが一般的なのです。
市内でエレベータのある学校は16校中5校しかありません。エレベータのある学校を訪問するときは、正直ほっとします。
ある小学校で、可愛い男子児童が
「せんせ、なんで車椅子に乗っとるん?」
と聞きに近づいて来てくれました。
「脚が折れてん」「痛いのん?」「うううん、もう痛くない」
「どうやって上に上がってきたん?」
「男の先生4人に、車椅子ごとかいてもろてん」「重たいやん」
「そうなんよ、エレベータがあったらええのになあ」
「ええ! そんなん無理やわ」
「なんで?」
「だって、学校ってそういうとこやもん」「……」
教育長室に戻り、私はこの会話を思い出してとても後悔しました。なぜ即座に「そうやないと思うよ。だれでも来られる学校にせなあかん。そのためには、エレベータもないとあかんわ。もし車いすを利用してる友だちがおったら、どうする? 自由に教室に上がってこられへんやん。先生かて、車いすや杖を使われるかもしれへんし、参観日に足の不自由なお父さんやお母さんがおってかもしれへんやろ?」と、言葉を返してあげられなかったのか。
折に触れ、子どもが「当然」と受け入れてしまっている現実に、「?」を持たせ、価値観を多様にする教育をしなくてはいけない。
何よりも、学校をバリアフリーに。誰ひとり取り残さないSDGsを、各学校に実現しなくてはいけない。
可愛い顔を思い浮かべながら、心の奥で、強く決意した学校での一コマでした。