第15回「愛の詩」

佳作

題名/他人の祈り
氏名/金子 弥生


若い夫婦が赤ちゃんの行方を捜していると、知人からメールが届いた。「情報があれば教えてほしい」丸々とした赤ちゃんの写真も添付されていた。大地震から一週間が過ぎていた。

共働きの若い夫婦は、海近くに住むおばあちゃんに赤ちゃんを預けていた。津波で家が流され、赤ちゃんとおばあちゃんの行方も分からなくなってしまった。行ける限りの避難所を探し、少し経つとあきらめて遺体安置所をまわった。でも、どこにもいない。すがるような思いで知人に送ったメールが私に転送されてきた。

絶望と、わずかな希望の間で苦しむ夫婦の切実なメッセージに、胸が締め付けられた。でも、私には何もできなかった。瓦礫をかき分けて赤ちゃんを探すことも、名前しか知らない夫婦の話を聞いてあげることも。

一年経ち、二年経ち、その赤ちゃんはまだ見つかっていないと、人伝てに聞いた。

「どうせ他人事でしょ。あなたの子どもは生きている。私達の気持ちが分かるはずない。」
もしかしたら、そう言われてしまうかもしれない。でも、祈らずにはいられない。

冷たい海にのまれ、寒くて苦しかっただろうけど、それがどうか、ほんの一瞬だけでありましたように。

おばあちゃんの腕に抱かれ、暗い海でも怖くありませんでしたように。

いまは天に昇り、光に包まれた暖かい場所にいますように。

そして、絶望の淵にいるママとパパの傍で光を照らし続け、いつか二人の苦しみが癒えるよう見守ってくれますように。

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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