第15回「愛の詩」

佳作

題名/父の背中
氏名/村山 涼子


厳格な父に育てられた私は、子どもの頃、父がとても怖かった。
そんな父も今や、怒ることもなく、穏やかにニコニコし、その笑顔は、無邪気な子どものようだ。

出来ないことが増え、記憶力も体力も低下し、そのもどかしさが父を苦しめたこともあっただろうが、今は、自身の老いを受け入れ、老いと上手く共存しているように見える。

そして今年、父は米寿を迎えた。
私の寝る前の毎日の日課は、父の体を手ぬぐいで拭き、マッサージすることだ。
老いた体と言っても、戦時中を生き抜いてきた父の背中はたくましく、広くてがっしりとして男らしく、高倉健の背中にも負けず劣らずである。

「一日でも、長く生きようね」
照れくさくて、言葉には出来ないけれど、そんな思いを込めて、今日も父の背中と向き合う。

こりがひどく、見た目にも張っている父の背中を、ゆっくりと時間をかけて揉みほぐしていく。手で父の背中に触れ、時間をかけて揉みほぐしていくと、私の心もほぐされていく。手に伝わる父の大きな背中の温もり。
「触れる」ことで感じる「心の温もり」。
心には直接触れられなくても、手から感じられる「心の温もり」。

いつになったら言えるだろうか。
感謝と謝罪の気持ちを。
そんなことを思いながら、今日も、父の背中をマッサージするのであった。

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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