第15回「愛の詩」

佳作

題名/あの選択は愛といえたのでしょうか
氏名/増田 真奈美


父は首を横に振った
酸素マスクで苦しそうに呼吸をしながら

医者に呼ばれ
肺に水が溜まりこのままでは危険な状態
人工呼吸器にするしか助かる見込みはないと

首を横に振る父の姿が過ぎった
もうこれ以上の治療は止めてくれということなのか

処置を拒否したらもう二度と父に会えなくなる
話したり笑ったりする父の姿を二度と見られなくなる
それは考えられなかった

生きてほしかった
それは家族のエゴかもしれない
でも、一分でも一秒でも長く一緒にいたかった
一%でも助かる見込みがあるなら、それに賭けたかった

人工呼吸器をつけて一ヶ月
麻酔でほとんど眠ったままの父
装置音だけが響く病室で
これでよかったのか自問自答し続けた
母と弟と私で
父の手や足をマッサージしている時だった
父が目を開けた
三人の顔をゆっくり見回し
目に涙を溜め
静かに頷いた
私たちも泣きながら何度も何度も頷いた

その二日後に父は旅立った

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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