第14回「愛の詩」

佳  作

題名/私を育てた懐かしいあなた(石巻市)へ
氏名/西野 久美


懐かしい私のあなた。

十八であなたに背を向けて、あなたの元から出て行った私は、あの日まで、あなたのことを忘れていたような気がします。

けれどもあの日、大津波に傷ついたあなたをテレビで見て、身体が震えた。胸がつぶれそうになった。情けない私は、その時に初めて、あなたを愛していたことに気が付いたの。

だから私は私の目で、傷ついたあなたを、目を逸らさないで、真っ直ぐに見つめなければいけないと思ったの。

震災発生から十日目に、私はやっとあなたの元に辿り着いた。そして、あなたの惨状をこの目で見た。その瞬間に私の足は、あなたの上で凍り付いた。言葉を失った。そして、涙が溢れ出て止まらなくなったのよ。

ごめんね。若き日に、あなたに背を向けて。ごめんね。あなたがこんなに辛いのに、遠く離れた場所で普通に暮らしていて。

ちっぽけな私は、あなたの傷を癒すことが出来ないけれど、少しでもあなたの支えになりたくて、大勢の人たちと共に、あなたの上に散乱した瓦礫や、積もった泥を片付けたの。あなたに暮らす人々の記憶を丁寧に拾い集め、あなたの元へ幾度となく足を運んで、あなたの体温を、空気を、肌で感じて、あなたを慕う、あなたの大切な人々と語り合ったの。

これからも私は、決してあなたを忘れない。あなたの傷が癒えるまで、あなたを想いたい。

いいよね?私を育てた、大切なあなた。

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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