第14回「愛の詩」

佳  作

題名/刺身ご飯
氏名/望月 弘美


祖母は目がいつも赤かった
疲れても疲れても
朝から晩まで田畑で働いた

借金取りが来れば
謝り、きっと返すからと約束した

文字を知らないが、物語が大好きで
町にかかる旅芝居は
かならず幼い私を連れて見にいった

私は終戦で大陸から母と引き揚げてきた
母はその過労と流産で帰国してすぐ亡くなり
私は貧しい農家の祖母に預けられた

村では引き揚げ者のよそ者と虐められ
学校では遊び相手がいない

俺の家の畑のだからとってこい
中学生に言われとったトマトは盗みだった
「くちおしいよお」
私を連れて畑の主にあやまりに行った祖母は
帰りの野良道にしゃがみこみおいおい泣いた

冬の夜はコタツで二人
小学生の私に熱血国定忠治を語る
正義の味方が大好きで
「貧乏人は勉強せにゃなあ」
自分がもらった大切な二千円を学費にくれた

温かいご飯に赤い刺身で食べたいよう
それが祖母のこの世で一番のご馳走だ

私が学校を終えるとき
秋の田んぼで稲穂に囲まれ死んだ祖母
私は平凡な人生を生きて
せめて私を愛してくれた祖母に
今夜も刺身ご飯を供えよう

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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