第14回「愛の詩」

佳  作

題名/亡き母へ
氏名/山田 清一郎


お母さん、あの時十歳だったあなたの子供は今七十七歳、お母さんが亡くなった年をはるかに超えて生きています。昭和二十年神戸大空襲であなたが「生き埋め」になってから六十年以上も過ぎています。空襲で逃げ込んでいた防空壕が、激しい焼夷弾攻撃で崩れ落ちてきたとき、「早よう逃げるんや!」と言って、掴んでいた私の手を離し、外へ強く押し出した時のお母さんの怖い顔を今も覚えています。あなたは私を助けるために生き埋めになってしまったのです。あの時どんな思いであの手を離したのだろうか。そこに母親のわが子への絶ち難い思いがあったのではないかと思うと、今でも私は胸を締め付けられます。

戦争孤児となった私は、周囲の人から野良犬のように追われ、バイキンの塊と呼ばれながら、ただ「生きる」ためにだけ生きてきました。誰からの援助もなく「たった一人で」生きていくのは、想像を絶する厳しいものでした。生き埋めになったままのあなたの無念な思いに対して、「母さん、ここまで生きてきたよ」と、自分が生きた証しを残したかったからです。私はその「みえない母」に支えられて生きてきました。私にはあの防空壕がその後どうなったのか分りません。今も「生き埋め」のままなのだろうか。

「ありがとう お母さん。あなたの子どもはここまで生きてきました」

あなたはどこにいますか。人は亡くなると天国に行くと言いますが、私にはあの防空壕が天国に繋がっているとは思えません。あなたはまだあの防空壕のなかですか…

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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