第14回「愛の詩」

佳  作

題名/ピント外れでも
氏名/阿江 美穂


小学校六年生のとき、家の人に叱られ、「もう家には帰れへん。」と言う友だちに同情し、一緒に家出をすることにした。

田んぼに干してあった藁束に寝ころび、「明日から隣町で働こう。」と張りきる私に、だんだん不安になってきたのか、友だちが、

「『琴姫七変化』、もう始まっとるやろなあ。見たいなあ。」

などと言うものだから、家の近くまで行ってみることにした。

すると、帰りの遅い子どもを心配して探し回っていた母に見つかり、敢え無く二人は家に連れ戻されてしまった。

母は、家出をしようとした私に熱いうどんを食べさせながら、こう言った。

「いやなことがあるんやったら、何でも話してよ。そうしたら、いやなことは半分になるし、うれしいことは二倍になるんや。それが、家族やで。」

空きっ腹に染み渡るようなうどんを夢中ですすりながら、心の中で、「違う、違う。」とつぶやいていた。 母の言葉は、そのときの私にとっては、ピント外れだった。私は、家族に何の不満も抱いていなかった。何だか新しいことを始められそうで、ワクワクしていただけだった。

ただ、そのとき、母から伝わってきた「あなたを大切に思っているよ。」という思いは、私の心に染みた。そして、その思いは、今も私の胸を熱くする。

母親となって、我が子の心や行いがつかみきれずに困惑したとき、ピント外れでもいい、「あなたのことが大好きだよ。」というメッセージを送り続けることができたのは、母のおかげである。

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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