第14回「愛の詩」

愛の詩賞

題名/涙の向こうで
氏名/和泉 漣


あの時。滂沱たる涙が止まらなかった。

3・11東日本大震災の時、発災から半年間、合わせて七度の災害派遣を経験し、そのほとんどを瓦礫の中を這いずり回ってご遺体の捜索と収容の任務に明け暮れた。
そんな中でも特に心が震えたのは「あの時」のことだった。

発災後間もない宮城県下の某小学校の体育館での出来事である。
海岸部の近かったその学校では避難中の学童や教師の多くが津波に呑まれ、遺体安置所となった体育館で遺族と悲しい体面をした。目を覆い、耳を塞ぎたくなりつつ私達は合掌しては黙々と棺を整理した。そして一週間が過ぎた頃、一緒にいた地元の行政職員が不思議な法則のようなことに気がついた。我が子の遺体を探しに来た親は棺には蓋がされ、誰が横たわっているのか外見からは判らないのに必ず、迷わずに吸い寄せられるように我が子の棺の前に立つのだ。

「親だから。親だから判るんですかねぇ。」

休憩時の一服の時、私は思わずそう呟いた。

そして「あの時」というのが振り絞るような行政職員の次の言葉を聞いた時だった。「違いますよ、お巡りさん。逆だぁ。子どもがね、親を呼ぶんです。『父ちゃん、母ちゃん、僕は、私は、ここにいるよぉ』、ってねぇ」

何も言えず俯いた。そして涙が零れた。子どもを想う親の心以上に子どもは親を想うのだ。

生命を超越した子どもたちの魂。天国に昇華する前、
あの子たちの親に送る愛のメッセージを、確かに私は涙の向こうで見届けた。

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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