第13回「愛の詩」

佳作

題名/なんじゃもんじゃの木
氏名/結城昌子


父さん、みつけました。やっとみつけましたよ。父さんが話しておられた「なんじゃもんじゃ」の木。お寺の参道横の細道です。こんな近くにあったなんて、うっかりでしたね。父さんが白い花をおどけて被り「なんじゃもんじゃ」と書き記された写真。それは何故か、赤い裁縫箱の中に長い事入っていました。反対されて結婚した貧乏作家との生活。家族との海外旅行に行かれず、父さんの食事係兼お酒の番人(?)として実家に泊った私。朝食の後、父さんの新聞から落ちた大特価、裁縫箱、一九八〇円のちらし。「ほしいのか」、「いいえ」 そう言ったのに、夕方、机の上に置いてあった。「どうも」 裁縫箱一つ買えない新婚の娘に、何か言いたいのをやめた父。びっくりする程嬉しかったのに、「有難度う」を言えなかった娘。
 二人はそのまま、いつもの夕食をした。 その裁縫箱に父さんの写真は四十年も眠っていたのです。いつか見に行こうと言った父さん。裁縫箱からパラリと落ちた写真を見て、急に思い出した私。 そして二ヶ月。あちこちを捜し歩いて、やっとみつけた「なんじゃもんじゃ」の木。(モクセイ科ヒトツバタゴの一種、まっ白な花を五月にちょっとだけ咲かせる)
父さん、私は花の傘被り、おどけた顔して待ってます。大空で、白い花、見つけたら、すぐ来て下さいね。「此は、なんじゃもんじゃ」と言われたら、「こんなもんじゃ」と答えます。そして、言えなかった「有難度う」を、今度こそ言います……おかしいですか? 父さん!

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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