第13回「愛の詩」

佳作

題名/お母さん、歩けるよ
氏名/印南房吉


初めて歩けて義足を見せに故郷に帰りました。父はウン、ウンと頷き手に持ってみて
「こりゃ軽いな」と云ったきり黙って義足を見ていました。母は突然立ち上がってその義足を赤ちゃんのように抱き上げ
「よかったなあ、歩けてよかったなあ」と新しい白布で拭き始めました。
ゆっくり丁寧に一つ一つのビスの割れ目まで孫の指のように磨きました。
そう、一年前、事故で左脚を切断した夜来て、母は大荷物を下ろすなり毛布を捲って
「こんなに短くなっちゃってよ、痛かったぺ…けんどどうやって歩くんだべか」と泣き
その夜からベッドの下に毛布を敷いて誰が何と云おうと動きませんでした。
それから五十年、今、私は自分で義足を磨いています。お母さんのように、ウン、自分の脚ですものね。

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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