第13回「愛の詩」

佳作

題名/じいちゃんの家
氏名/五葉 楓


ねぇじいちゃん
わたしは全然覚えてないのだけれど 
じいちゃんに出会ったときのこと
じいちゃんは覚えていますか

ねぇじいちゃん
ちょうどわたしが産まれた年に胃ガンでなくなったって
タバコもお酒もやらないのにって
じいちゃんがいなくなったときのこと 
ずっと昔から何遍も聞いている
お母さんは今でも同じように哀しそう

ねぇじいちゃん
じいちゃんのお屋敷はね
米軍の演習場になってしまったから 
もう跡形もなくなってしまったんだよ
ほんとうになくなってしまったのか
車の免許を取ってから行ってみたけれど
閉鎖された思い出の先にはたどり着くことができなかった

ねぇじいちゃん
わたしはじいちゃんのお屋敷が大好きだった
夏にたくさん蚊に刺されても 
冬に手足がひどくしもやけになっても
静かな夜に不気味な柱時計が ぽおんと時を告げるのが怖くても
仏壇の前で 弟に悪さをしたことを反省したりもした
なんだかいつもじいちゃんがそばで見てくれているような気がしていた
わたしはすっかり安心して 
もっと、ずっと、ここにいたいと思っていたんだよ

縁側に座ったばあちゃんが
ほかほかに茹でたとうもろこしを持ってわたしを呼んだり
ざるにあけたたくさんの小豆をざらざらところがしていたり 
ていねいな仕草でじいちゃんのお神酒を取り換えたり

あのお屋敷は もうどこにもない
じいちゃんの面影も なくなってしまった
私が忘れてしまったら もうほんとうに消えてしまうじいちゃんの家

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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