第13回「愛の詩」

佳作

題名/くりくりぼうず
氏名/桜木華咲


母に怒られ
むしゃくしゃして いらいらして
八つ当たりして 家を飛び出し
ふと八百屋の前で立ち止まった
目に飛び込んできたのはひと山の栗

昨日の遠足に
母は茹で栗をむいて
タッパーの容器いっぱい持たせてくれた
原っぱでお弁当を広げると
一つちょうだい 一つちょうだいと
みんなが集まって来て
栗を口の中にポンと ほおりこみ
「おいしいね」と にっこり笑った
「こんなにたくさん栗の皮をむくなんて
お母さん 大変だったでしょうね」
最後の一つをつまみながら
先生が言った
「帰ったら、ちゃんとお礼を言いなさい」
ずっと当たり前のことだと思っていた
母さんの栗むき

八百屋の店先に並んだ栗を見ているうちに
背を丸め せっせと皮をむいている
母の姿が思い浮かんだ
力のこもった親指を反らせ
荒れた指先は渋で黒ずんでいる
そんなに大変なことだと
思ってもみなかった
母さんの栗むき
そう言えば
まだ「ありがとう」も言ってない

イガイガしていた心が
いつのまにか
ほっこりとしたクリーム色の
くりくりぼうずになっていた
まるで母のむいた栗みたい

何だか急に家が恋しくなった
「ごめんなさい」って言えるかな
私はくるりと踵を返し
家に向かって駆け出した
八百屋の店先でひと山の栗が
つやつやと輝きながら
私を見送ってくれた

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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