第13回「愛の詩」

佳作

題名/湯たんぽ
氏名/宇根周佑


「田んぼと畑は見飽きたわ!」
大学進学とともに、僕は初めて故郷を出た。
頭の中は都会でいっぱいだった。
知らない町。標準語。自分だけの部屋。新しい友達。
すべてが新鮮だった。
そうして僕は、家族とも、友達とも、少しずつ連絡をとらないようになり、だんだんと故郷を忘れていった。
暑い夏が終わり、イチョウがちり、やがて冬が来た。
休日のある夜、こたつでミカンを食べながらふと思った。

「こたつの中、からっぽや…」
兄弟で入ったこたつ、家族六人で毎週つついた鍋、暖房を切ると怒られたこと、カイロを持っていけとうるさかったこと。
今まで当たり前だった冬が、ここにはない。
どしてだろう?急に家族に会いたくなった。
家が恋しくなった。あの友達とあの道を走りたくなった。

年の瀬の夜。一人、夜行バスを待っている。
渋滞。遅刻。木枯らし。
ふと、ポケットの携帯が鳴った。高校の友達と母親からだ。
「年末帰ってくる?久しぶりに会わへん?\(^o^)/」
「明日何時に着くか連絡しなさい。」

マフラーをなくしたことがある。
パッチをはいても、ババシャツを着ても、
カイロを貼っても、手をつないでも、
寒い日は寒かった。
でも、これだけは忘れない。
たとえどんなにバスが遅くても、
どんなに風が冷たくても、
帰る場所がある。待っている人がいる。
その事実が、
僕の、僕だけの、心の湯たんぽだ。

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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