第13回「愛の詩」

愛の詩賞

題名/母の母
氏名/木下寛子


女手ひとつで子ども五人育てた
働き者のおばあちゃん
若いときの写真は、ひとつもないけれど
とても美人だったと近所の人は言う
働いて働いてそれでも貧乏で
それでもマジメに働いた
崖にそびえるような畑を耕して
八十九歳になる今も一人、山で暮らす
食べきれない野菜や果物を沢山作って
子どもや孫たちにあげる
買い物はタクシーで週に一回
手作りのナップザックいっぱいにお茶菓子を買うのは
遊びに来る子どもや孫のため
遊びに行ったら、全然座らない
お菓子を、お茶を、あれを、これを
「おばあちゃん、もういいよ。座って」
といっても、
「ハイハイ」といいながら全然座らない
「もう畑仕事はやめなよ」といっても、
「ハイハイ」といいながら全然やめない
「おばあちゃん、また来るからね」
車が見えなくなるまで、ずっとずっと手を振り続ける
おばあちゃん
社会人になっておばあちゃんにお年玉をあげた
ありがとうといってお仏壇に飾ったまま
今もずっと飾っている
「使いなよ、おばあちゃん」
「ハイハイ」といいながら全然減らない
筍掘り、ビワの収穫、夏野菜の収穫、ユズの収穫
どんなに頑張っても、ベテランのおばあちゃんには敵わない
お母さんがノートに書いていた願い事を見てしまった
「母さんに、人生を、返してあげたい」
おばあちゃん
おばあちゃん
脳に水がたまる病気になってしまった
心臓もよくない
薬で抑えながら
今日も畑に出るおばあちゃん
神様どうか
まだおばあちゃんを連れて行かないで
返事が「ハイハイ」でも、いいから

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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