第12回「愛の詩」

佳作

題名/味噌
氏名/海野 兼夫


子供の頃ぼくはときどき嘘をついた
魚屋の若旦那がかけをとりに来ると
おふくろは台所に隠れぼくはドキドキ
かあちゃんはいませんと涙目で言う
そんなことがよくあった

夏蜜柑なんか食べたこともなかったので
友達の家で大きいのをもらったときに
ぼくは厚い皮ごとかじりついて目を白黒
友達もびっくりして家族を呼びにいった

とにかく貧乏すこぶる貧乏
でも天の川は夜空でさざめき
庭から蛍は迷いこみ
入道雲の夏の午後は戸を開けはなって
みんなで堂々の昼寝
そんな素晴らしい貧乏

繰り返し思い出すのは
月末になるといよいよ金がなくて
夕飯のささやかなおかずはぼくらに回し
おやじとおふくろは
ごはんに味噌を乗せただけで食べていた

そう今でもよく思い出す
ほくほくとうまそうに
ふたりして笑顔で食べていたっけ

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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