第12回「愛の詩」

佳作

題名/もしも願いが叶うなら
氏名/井上 聖子


三十五歳を迎える姉をランチに誘った。
子育てで忙しい彼女には久しぶりの外出。
傘から顔を出してキョロキョロと街を見上げる彼女。

レストランで
食べなれてないものを、笑いあって食べる。
表情七割で全てが分かる私達に会話はそんなにない。
難聴の姉と私は、ずっとそれで繋がっているんだもの。

サプライズプレートが運ばれてくると
姉は照れながらうつむいた。

キャンドルを吹き消し、
お店の人に写真を撮ってもらった。
しばらくすると、姉はポロポロと涙を流した。

お姉ちゃんを守るために産まれてきたんだねと
言われて育ってきた。
でも、それは私の中では当たり前のことで
小学校に入ると、休み時間の度に姉のクラスに顔を出して皆を笑わせていた。
それで姉がみんなと笑ってくれるなら、私は満足だった。

勉強も人の何倍も頑張っていた彼女。
中一になると、髪の三分の一が白髪になった。
それでも姉は毎晩、勉強を見てくれる母に
「今日もありがとう」と言って寝ていた。
その寝顔を見ながら、母は毎晩泣いたと言っていた。

人には、知らないところで自分の為に
いっぱい考えたり、泣いたりしてくれている人がいるんだ。

小さい頃、
「もしも願いがかなうなら、お姉ちゃんの耳をなおしてあげたい」
と言ったら、
「せいちゃんはせいちゃんの人生を生きればいいんだよ」
と母が言ってくれたのを思い出す。

この先どんな人生が待っているとしても、
これまでも、そしてこれからもずっとその願い事は変らないよ。

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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