第12回「愛の詩」

愛の詩賞

題名/聞こえる?わかる?
氏名/やきぐり


明治の最後に生まれたおばあちゃん
あとちょっとで百歳

「入院が長いのはいやだ」
「何もわからなくなって生きているのはいやだ」が口癖だったけど
その「いや」なことがもう四年も続いている

明治の女は厳しくて
なんでもかんでも口うるさくて
とにかく毎日叱られていた

孫なんだけど、ちっとも甘えさせてくれなくて
正直苦手なまんま私は大人になった

就職して家を出て、色んな楽しいことを知ると
あんまりおばあちゃんにも会いに行かなくなったね

私があんまりにも結婚しないから
いつも心配していたね
帰るたびに「いいひといないのかい?」と言っていたね

おばあちゃん
やっと結婚したんだよ
私ね、ご飯の食べ方キレイだって言われるよ
料理上手だって喜ばれるよ
姿勢がいいって褒められるよ
きちんとした人だなんて評判なんだよ、照れるよ

全部おばあちゃんが私に口うるさく叱って教えてくれたからだよ
ありがとうね
明治女のいいところ、昭和の私が受け継いで
平成に伝えるよ

病院のベッドに横たわるおばあちゃんの
足をさする
手を握る
話しかける

「おばあちゃん、私、赤ちゃん産んだんだよ
遅くなってごめんね、すごくかわいいんだよ
だっこしてもらいたかったよ」
聞こえる?
わかる?

きっと伝わってるはず

私はおばあちゃんの赤ちゃんだった頃を想像してみる
もうおばあちゃんの赤ちゃん時代を知る人はいないから

おばあちゃんも赤ちゃんだったんだよね
なんだかわからないけどせつないよ

「いや」かもしれないけど
まだ いかないでね

好きだから

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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