第10回「愛の詩」

佳作

題名/オシッコ一升の想い出
氏名/伊東 静雄(静岡県)


これが最も古い記憶だと思う。

五歳の頃の遠い想い出。そのとき母が末弟のオシメを換えようとして両足をもたげたとたん、弟がピュッとオシッコをとばし少し母の顔にかかった。

「あらま」と母は微苦笑するとオレに言った。「子どもひとりを育てるにはね、母ちゃんはオシッコ一升のむんだよ。」

この光景は今でも鮮明に目にうかぶ。

コロと元気に動く弟。いとおしげにお尻の始末をする母。別に母はオレに教え諭す意図はなかったろう。

しかしその時、オレは母の悲しいまでの愛の深さに幼い胸がつまった。子どもの為なら命を賭すことも厭わないであろう親心に。

オレに反抗期などという贅沢?な成長過程は全くなかった。このオシッコ一升の場面がそれを抑え許さなかったのかもしれない。

母ちゃん、ありがとうね。

オレ、おかげで傘寿を迎えてなお元気です。

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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