第9回「愛の詩」

佳作

題名/家族の絆
氏名/小山 和彦(静岡県)


二十三歳で、お前は片足を失ってしまった。

一生懸命に働き、弁当箱も残り物を詰めた程度。

好きな缶コーヒーも買わず、女房と生まれてくる子供の為、一切の無駄遣いもしない奴に、降りかかった労災事故。

神も仏も無い、と俺は痛切に感じたよ。

世の中には、親の資産や稼ぎを当てにして
ぬくぬくと暮らしているヤツも多い。

彼らは旨いモノを食い、高級車を乗り回し、
贅沢三昧な海外旅行を自慢し、傲慢の権化そのものだ。

何故、真面目な勤労者が苦労を強いられるのか。

太股から下を失ってから八ヶ月も過ぎたのに
お前は繰り返しの手術に耐えている。

励ましは、一ヶ月前に生れた子供だろう。

お前が子供を抱く時の表情は、安寧に満ちている。

ただ、確かな事実は、お前の両親も俺達も、勤務している会社の人々も、お前を愛していると確認できたことだ。

黙って抱きしめたいという雰囲気が、漂っているではないか。

皆、お前がコツコツと働き、節約と倹約に努めていた事を確認している。

そんなお前を認めてくれるだけで、皆さんに俺は感謝するよ。

10月13日に、ふと立ち寄った道の駅で太鼓の音に魅かれその側に吸い寄せられた。

若い奏者が全盲だと知ったのは、演奏後に本人がその説明をしたからだった。

彼は「全盲になったからこそ太鼓と出会え、皆さんの前で演奏をする機会を得た。これは感謝に値する」と言う意味の事を言った。

目を潤ませた衆の拍手は鳴り止まなかった。

奏者は破顔一笑し、深々と頭を下げた。

俺はこの日の感動を、一生忘れられない。

お前も、前向きに生きることだ。

災い転じて福と為せ。

逞しく、逞しく生き抜いてくれ。

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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