第9回「愛の詩」

佳作

題名/涙
氏名/フミエ(大分県)


子供の頃は、母が大きく強く見えて、少し恐かった。朝から晩まで、がむしゃらに働いて、女手一つで兄と私を育ててくれた母は、まるで父親のような存在だった。

高校生の時、私はずっと知りたかったことを、思いきって聞いてみた。決して、母からは話したがらない父親のこと。辛かったあの日のこと。話している内に、ふいに私の口から出た、冗談半分、不安半分の複雑な言葉。

「私は生まれてこん方が、本当は良かったんじゃないんかな。」

短い沈黙の後にあったのは、今まで見たことのない切ない表情をした母が、涙を必死にこらえる姿だった。

「あんた、そんな事をずっと考えてたん?」

震える声と同時に、こらえきれない涙が母の頬を流れ、優しく私の頭の上に置かれたその掌は、不思議と小さくとても温かかった。

「また馬鹿なこといいよる!」って怒られて「冗談よ!」って笑って言い返すはずだったのにね。

涙がでる‥‥。

苦しいときも辛いときも、涙を隠して、気丈に生きてきた母さんだから。私の為に流してくれたその涙が、どんな言葉よりも愛に溢れている気がして、私も泣かずにはいられなかったよ。

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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