第8回「愛の詩」

佳作

題名/ボクの兄貴
氏名/日高 伶(石川県)


ボクの兄は、なかなか重度の身体障害者だ。

食べられないし、喋れないし、歩けないし、体は曲がっているしと、まともなトコの方が少ない兄貴。

そんな兄は、幼かった当時のボクの苦手なモノの一つだった。
いや、嫌いなモノの一つと言ってもよかった。

多分、四六時中面倒を見て貰って「母を独り占め」する兄は、幼心にとって何よりも憎い敵だったんだろう。

でもそんなボクに母はある日、「兄は偉いんだ」と、本当に嬉しそうに自慢した。
ボクは不思議に思って、そして怒った。
いつも母に世話させて、迷惑ばかりかけてる兄がどうして偉いんだって。
すると母は、
「だって兄ちゃんは苦しくても、私に気を遣ってガマンするんだよ? 凄くない?」
そうどこまでも幸せそうに言った。

確かにボクは兄が発作で苦しんでるのは見たことがあるけど、一度も泣き叫んでいるのを見たことがない。
それって兄なりの親孝行みたいなものなのかな、なんて、ふと思った。

それからしばらく後、母が兄を病院から連れて帰ってきた時、
「えいしょ、よいしょ」と言いながら、小さな体で危なっかしげに兄を運んでいた。
「運んであげるよ」
そう言うと、「落とさないでよね」なんて母は逆に心配して兄を渡してくる。
曲がった体は妙に抱きやすくって、とても重かった。

兄はすごく楽しそうな笑顔だった。
あぁ、こんな嬉しそうにするなら、もっと早くから世話してあげればよかったな。
ゴメン兄ちゃん

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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