第8回「愛の詩」

佳作

題名/母の歳をこえて
氏名/坂田 みや子(兵庫県)


その手紙は小学校の同窓会で受け取った。「これは、あんたが持っていた方がいい。」 そう言って恩師のA先生は胸ポケットから黄ばんだ封筒を取り出された。青インクで書かれた宛名の字を見るだけで、差し出し人は亡くなった母だとわかった。日附は八月三十一日になっている。

「・・・・(略) 長い夏休みも私達親子大変楽しく過ごさせて頂き、学習に家事にとよくつとめてくれましたのもみんな先生のお力添えのおかげと感謝いたして居ります。・・・・(略) 大変子供も張り切って二学期の準備をいたして居りました所、ふとした不注意から大切な通信簿を汚してしまって・・・・先生に謝罪に行けと朝から泣きくれています。早速お無理やら不始末をおわびに参上せねばなりませんのに書面をもってお許し下さいませ。大変申し兼ねますが新しい通信簿を作ってやって下さいませ。お願い申し上げます」

あの日、仏壇に置いていた通信簿は供え物の水が溢れたのであろうか褐色になっていた。母を責めて泣く娘を憐み、母は先生に手紙を書いたのだろう。思いがけない遺品を手にした私は、何回も読み返して母を懐かしんだ。多くの母親がそうであるように、私の母も子供と共に喜び泣く人だった。母はガンで五十五歳で亡くなった。

母の歳をこえて五十八歳になった娘は、今日も母を思い出し、その愛に感謝して生きている。

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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