第7回「愛の詩」

佳作

題名/郵便局にゆく日
氏名/中本 百合枝(兵庫県)


坂道を下ったところに
郵便局があります
萩や八つ手や南天のある庭を左手に見ながら
運動靴をはいて
手紙を出しにいくところです

坂を下りきったところの横断歩道で信号を待っていると
向こう側にあの方が立っておられます
にこにこしてもうとっくにこちらに気付いておいでです
わたしが昔プレゼントしたふわふわのカーディガンを羽織って
丁寧ないくつものお辞儀をなさいます

信号は変わりません
いつまでたっても赤いまま
わたしたちは道路をはさんで見つめ合います
お元気ですか
どうしてこんな所に
二十年ぶりでしょうか
あの方は以前のままのうつくしさで
ただ笑っておられます

忙しいという理由にもならない理由をつけて
とうとうわたしは一度も会いにゆきませんでした
待っておられることは十分わかっていたのに
それなのにわたしを許して
あの方は笑っておられます

雪見障子から眺めた庭の椿は
今も白い花を咲かせているでしょうか
お孫さんたちはあの愛くるしさのまま
膝元にいらっしゃるのでしょうか
お習字は続けておられますか

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

Page Top