第7回「愛の詩」

佳作

題名/虫干し
氏名/保科 章代(静岡県)


穏やかな日、心の引き出しを開けて、仕舞っておいたものを虫干します。
埃を払い、ほづれた糸は繕い、掌にのせて懐かしんでいます。

一つ目の引き出しには、幼い頃 道ばたの茂みで見つけた赤い実が入っていました。

赤紫に熟れた実をもいで頬張り、食べた甘い果肉。
種をほき出した後、舌に微かに渋みが残ったぐみの実。
内緒で食べた筈が白いブラウスに、ポツリ垂れた汁。

お母さんは、染みに固形石鹸をなすると、もみ洗いしてくれました。
禁じられていた実なのに、叱られなかったのは、小さな心が満たされていたからでしょうか。

日差しが傾くころ、大切な赤い実を引き出しに戻しました。
心の中がほんのりと温かいのは、育んでくれた優しさのおかげです。
五十歳も半ば過ぎたのに、私の引き出しには、宝物がいっぱい詰まっています。

ありがとう、お母さん。

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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