第7回「愛の詩」

佳作

題名/卒業する君へ
氏名/高橋 千秋(青森県)


君が入学してから三年が経とうとしています。

入学した頃の君は車いすに乗ってため息ばかりついていたよね。僕は養護学校で働くのは初めてで頼りなかったのかな。

君は普通学校でバレーボールの選手で活躍していた。しかし突然右手右足が動かなくなってしまった。

そして僕と出会った。

あの頃の君の口癖は「仕方ない」だったのを覚えているかい。上手く使えなくて当然なのに、左手で箸を持ち人参を落としてしまい、「仕方ない」と食べるのを止めた君。トイレに駆け込んでズボンを下ろせず、トイレに引っかけてしまい、「仕方ない」としょんぼりとした君。そんな暗い顔をした君を見ていられず、僕は難しいと分かっていながらも「もう一度、立って歩こう」と言ったんだ。

それから二人で歩く訓練を始めたね。

固くなった足首や膝を柔らかくして、その度に痛みに耐えて。何度も転んでつまずいて。僕は倒れてくる君を支えるのに必死だった。だって僕より背は高いし、体重だって十キロは重いんだ。

一年が過ぎ二年が過ぎ、三年経った今年の春、学校のグラウンドを一周歩くことができた時は二人で泣いたよね。これで「仕方がなくない」って。

近頃、僕は以前より歩くのがゆっくりになった気がする。物事をじっくりと考えることができるようになった気もする。これは君からの贈り物なのかな。

卒業まで残り少ないけれど、二人で歩く時間を大切にしよう。卒業したら、一人で歩いて行かなくてはならないのだから。

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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