第6回「愛の詩」

佳作

題名/定年のラブレター
氏名/水木 由季(神奈川県)


「拝啓 ○○さま はじめてお便り申し上げます」
なんだか気恥ずかしいなァ テレちゃうよ
最初にして 最後の君への手紙
こんなこと やったことないから
昭和一桁に 生をうけ
男女席を分けて 教育され
一枚のラブレターも 書いたことのない男が
今 心に決めて 筆を取った
これだけは 伝えておきたいから
とにかく 長距離耐久レースだった
独り 走りはじめて 四二年
二人三脚となって 三七年
会社 仕事 高度成長
"負けるな 追い越せ 途中棄権は 認めないぞ!"
間借りから 間借り
団地から 団地へ
ローン地獄の 一戸建て
片道二時間 通勤コース
完済するのに 一五年
京都から 東京
東京から 大阪
ふたたび 東京へ帰って
名古屋への 単身赴任
解放されたら五五才
夫婦併走に 女の子が 参加し
やがて 男の子が 従いてきた
そして……女の子が 去り
男の子も 離れようとしている
また 二人三脚へ 逆戻り

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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