第6回「愛の詩」

優秀賞

題名/喜んで捨てる
氏名/佐藤 祐子(千葉県)


トルコの田舎、二千メートルを越える峠で
私たちのバスは写真ストップをした。
雄大な見晴らしに歓声を挙げる私たち。
そこへ、
盲目の老人が少年に支えられて寄って来る。
痩せて小柄、貧しげな身なり。
皮膚病を思わせる赤らんだ顔に凹んだ眼窩。
彼は支えられた手を、私たちに差し出す。
そ知らぬふりでそそくさとバスに乗り込む日本人。
もちろん、私も。
とまどいと、わけのわからない不快感。
そこへ、
私たちと入れ換わるように、トルコの若者たちが五、六人、乗用車でやってきた。
彼らは降りるやいなや老人に近寄り、
うやうやしく老人の手に紙幣を乗せる。
ギュン。
発車したバスの中で私の胸が疼いた。
喜捨、ザカート、豊かな者は貧しい者へ施すべしというイスラムの教え、愛。
それが若者によって、ためらいなく行われていることを目にした感動、
そして反省、後悔。
ゼロがいっぱいついたトルコの紙幣。
日本円にすれば五十円か百円。
それを結果的に惜しんだ私。
恥ずかしいなあ、恥ずかしい。
これからは、
喜んで捨てる私にならなくちゃ。

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

Page Top