第6回「愛の詩」

優秀賞

題名/早紀からのメッセージ
氏名/松井 直子(兵庫県)


二〇〇四年十一月一日、私は最も大切な人の為に心を込めてシュークリームを作った。

二〇〇三年十一月一日。この日を私は生涯忘れることはない。十月から十一月に日付が変わって間もなく電話が鳴った。警察からだった。

娘が交通事故に巻き込まれたとの内容。震える手でハンドルを握り夫と共に病院へ。

娘の姿を探す私達に告げられた娘の居場所は霊安室だった。十八歳という若さで永遠の眠りに就いた娘との対面は、人生のどんな失敗や挫折もやり直せる、そう信じて生きてきた私をやり直しのできない絶望の世界に突き落とした。

娘が三歳の時。カスタードクリームの甘い匂いが家中に漂い、外で遊んでいた娘は匂いに誘われ何度も台所に入って来ては人差し指の先にクリームをつけてペロリとなめ
「おいしい」と顔をほころばせた。

以後どんなお菓子を作っても娘は決まって
「私はお母さんが作ったあのシュークリームがたべたい」と言った。

人生の切なさを経験する年頃になるにつれ、幼い日の甘い思い出は娘を幸せな気持ちにさせてくれたのだろう。差別を嫌い人との間に壁を作らなかった娘は人権の勉強がしたいと法学部を目指していた。そんな娘は生きた証として大きな人の輪を残した。私は今その暖かい輪の中にいる。それは絶望の淵から私を救おうとする亡き娘の親孝行だ。

娘と出会い十八年という時間を共有できたことに、毎日毎日感謝の涙が溢れる。娘のささやかな願いを叶える為に私はシュークリームを作った。

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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