第5回「愛の詩」

佳作

題名/描き続けよう、二人の人生絵画
氏名/玉木 文憲(大阪府)


六年前のある朝、仕事に出かける支度を済ませた君が枕もとを訪れ、
「ねえ、このまま寝たきりになっちゃうの?」
と言い置いて出かけて行きましたね。私が難病の進行にくじけ、寝たきりになっていた折のことです。
万策つきて半ば死体のような生活をおくっている私には、この突き放すような問いかけに、返す言葉がありませんでした。
 十五年前、病魔が忍び寄る私のプロポーズに、君は、
「あなたの描く人生絵画に、私を描き重ねてみたい」
と熱いレスポンスをくれました。ですから私が寝たきりになってしまうということは、この君との共有の人生ビジョンである「二人の人生絵画制作」を、私の一方的な都合で反故にしてしまうことを意味します。
「約束違反だけはしたらいけない」思い立った私は、あのときすぐにベッドから降り、ヘビのように這って、リビングに向かいました。久々に訪れたリビングには、早春の明るい光が満ちていました。ベランダのプランターに植えられた水仙が、小さなつぼみをつけています。下向きだった私の気持ちが、少しだけ前を向きました。そして書棚の上でやさしく微笑みかける君の写真に向かって、
「ありがとう」と言ってみました。
写真の君は、とても嬉しそうでした。これからも二人の人生絵画を、仲良く、楽しく描き続けていきましょう。

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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