第5回「愛の詩」

佳作

題名/ありがとう故郷
氏名/黄海 孝(千葉県)


今年のお盆、数年ぶりに家族みんなで「山紫水明の岩手」に帰省した。
「故郷の母ちゃん、元気だろうか」久しぶりに帰る、私の心は弾んだ。四年前、私の勤めていた銀行が破綻した。「驚天動地」の出来事だった。不安・憤り・怒りの日々が続き体調を崩し、三年前銀行を辞めた。
破綻した時、岩手の母ちゃんから
「あんだ、うざねはぐなあ、みなでこっちゃ帰ってこー」
と、電話が来た。
四十過ぎても、俺は母ちゃんの子供だった。故郷に着いて「変わらない山河」が、妙に懐かしかった。
「よぐ、かえってきたなあ」
「ああ、母ちゃんも元気そうで……」
孫(娘三人)の顔を見て母ちゃんは、微笑んだ。
二十年前に亡くなった親父の墓参りに行き、大好きだった酒を飲ましてあげた。
「親父、俺の娘たちだ、大きくなっただろう」
と私は墓石に呟いた。我が実家の墓だけは、昔のままだった。
 帰る日がきてしまった。兄貴が、
「米、好ぎなだけ持ってげ、身体に気をづげでな」
と声をかけてきた。
「ありがとう、助かるよ」
「管理人の仕事、どうだ?」
「何とかやってるよ」
「そうが……」
母ちゃんが
「梅干も持ってげ、漬物はいらにゃが………」
と、あれこれ言ってくる。
「ありがとう………」
故郷・岩手の一番大事な贈り物「情け」を背に受けながら、我が家族は別れを告げた。
「ありがとう、かあちゃん、ありがとう故郷」

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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