第4回「愛の詩」

佳作

題名/雄太
氏名/出雲 省三(福岡県)


「お父さん、僕が中学生になったら、お父さんとお母さんが別れた理由教えてくれると言ったよね。」
中学生になったばかりの雄太が突然聞いた。
月二回、我が家に泊まりに来る雄太とゲームセンターに行った帰りだった。私はとまどった。コンビニの駐車場に駐車して、ルームミラーで雄太を見た。思い詰めた顔で私を見つめていた。
私は決意した。
「お父さんもお母さんも悪かったんだ。雄太には何の責任もない。」
雄太は無言で私を見つめていた。怒っているようだった。しばらくして口を開いた。
「どうして別れたの。」
もう隠せないと思った。
「お父さんとお母さんが、長い間けんかして、どっちも意地っ張りだから謝らなくて、お母さんが雄太を連れて家を出て行ってしまったんだよ。お父さんが悪かった。」
それだけ言うと、雄太が突然泣き出した。しゃくりあげ手で涙を幾度も拭いた。
私は車の後ろに座っている雄太にたまらず声をかけた。雄太は泣きながら前の座席に移り声をあげて泣いた。私は雄太を抱き、雄太は私の膝の上でいつまでも泣いた。
「雄太、ごめんね。ごめんね。」
雄太の頭を抱きながら私は思った。今日のことは決して忘れてはならぬ。
フロントガラスから赤みがかった月が、暗い雲をわけさびしく光っていた。

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
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