第4回「愛の詩」

佳作

題名/幼い初恋
氏名/光城 健悦(北海道)


四十年ぶりの再会でした。貴女は〈楚楚のまま〉笑顔でした。涼しい目元と面長な色白でした。私の初恋の人でした。貴女はご存知ありません。ただの幼い遊び友達と思っていたでしょう。

いま私は室蘭在住です。

クラス会の案内が、最初に届いたのは八年ほど前でした。

私は二十代前半に函館を離れました。そこから指を折っても三十年以上、小学校時代の級友に会っていません。会発起人に貴女の名前を見て、落ち着きをなくしました。

列車が函館山に近づくと、不安になりました。貴女の面影が、たった一枚あるセピア色した写真のままなのか、昔の顔を頼りにしていいのか、胸苦しくなりました。

貴女は小学校卒業から、中・高一貫の女学校に進みました。そのあと、風の便りに見初められて玉の輿で嫁がれたと聞きました。そして、数年前、夫に先立たれたと旧友から電話がありました。疲れやつれた貴女と会いたくはありませんでした。私には変わらぬ笑みしか残っていません。

杞憂でした。いまは、従業員数十名の水産加工会社を亡きご主人の後を継ぎ、陣頭指揮をとっていました。散会後、宿の床で俳句を書きました。

「年齢も、笑顔の皺も、美しく」

私を○○ちゃんと呼んでくれたとき、屈託も気兼ねもなく、遠い記憶は初恋のまま生きておりました。風のように、羽音のような貴女の振る舞いは、私の心に立ち上がりました。

貴女は私の秘めた初恋の人に、又なりました。

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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