第3回「愛の詩」

優秀賞

題名/『母へ』
氏名/村井 礼子(北海道)


もの心ついた時には、私は虐待の中にいました。何の前触れもなしに、あなたは突然鬼のような形相になり、身の回りにある物で手当り次第に私を叩きました。自分がなぜ叩かれるのか解らず、泣くと暴力がひどくなるので、私はいつもじっと我慢しました。

成長するにつれて、4歳上の兄が重度の知的障害であること、父がそんな現実から逃げるために仕事に没頭していること、そのせいであなたが大きなストレスを抱えていることなどがわかってきました。どんなに虐待を受けても子供は母親を好きです。でも、虐待から逃れるために、私は高校を卒業すると家を出ました。他人は親よりも優しくて、虐待のせいで歪んでいた私の病的な性格は周囲の人達のおかげで少しずつ治り、結婚することができました。夫の愛情に守られながら、あなたのような母親にだけはならないという強い気持ちで娘を育て、その過程で私も本当の愛を知り、あなたへの同情も生まれました。

「昔、よく私を叩いたよね。」

と言ったら、あなたは心の底から驚いた顔をしましたね。
「叩くはずないでしょう。あんたは、とっても良い子だったんだから」
それには私の方が驚きました。長年の苦しみを本当は少しでも解ってほしい。でも、私とは良い母娘関係だったと信じている年老いたあなたに、今さら辛い思いをさせたくないから、この言葉は言わないでおきましょう。
「あなたを許します。」

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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