第2回「愛の詩」

優秀賞

題名/母の手
氏名/益田 真栄(兵庫県)


小学生の頃、母の手を忌み嫌った。

参観日の時、友達のお母さんの白く細い指が羨ましかった。

節くれだった母の指が、恥ずかしかった。草汁が染み付いた母の指を、友達に見ら
れたくなかった。冬になると母の指は、アカギレで赤く腫れ、割れて血がにじんだ。
そんな指で毎晩内職の着物を縫っていた。きれいな錦の布にアカギレに巻いた白い絆
創膏が、痛々しかった。

あれから三十年。久しぶりに実家に帰った。母が大きなおにぎりをにぎってくれた。
おいしかった。おかずはいらなかった。五つも食べた。お茶を入れてくれる母の手を見た。
節が立っていた。ひび割れた指先には、土と草汁が染み付いていた。三十年前と同じだ。
ただ、しわが増え、一回り小さくなっている。

自分で買ったのか紫色の石をはめ込んだ指輪をしている。私は、指輪の不似合い
を笑った。しかし、なぜか涙がこぼれて止まらなかった。

田畑を守り、家族を養ってくれた母の手を、ささやかなおしゃれを楽しむ母の指を、
私は、誇りに思い、感謝したい。

 

問合先 ふるさと創造部 人権推進課
TEL:0790-42-8727 FAX:0790-43-1380 mail:jinken@city.kasai.lg.jp

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